その頃のDOZ(ダース)支部。
「なんであいつを行かせたんだよ!」
煌星は今朝しがた蛍子が全能寺について出て行ったことを知った。
そして、(当然のごとく)納得できなかったので支部のリーダーの書斎に怒鳴り込んできたところだった。
「そんなに全能寺が心配なら、俺が行けばよかったんだ。」
「それはダメよ。」
(即答)
「なんで。」
「あんたには特別の訓練メニューを用意してるから」
りくはウィンクをしてみせた。
「と・・とく・・べつの・?」
煌星は青ざめた。
嫌な記憶が蘇る。
「・・はは、いつのまに・・そんな話になってんのかなぁ」
煌星はひきつった笑いを浮かべながら言った。
りくは、髪を掻き上げると不敵な笑顔をつくる。
「煌星君限定のスペシャルメニューですからね。感謝しなさい」
「誰が!あんな拷問みたいな特訓毎回させやがって・・
それより、なんで星乃なんだ!DOZに入ったばかりだろ?
それに泊まりがけなんて・・問題ありすぎるだろ!」
「ふぅん、そんなに心配?」
「心配に決まってるだろ!」
「ほほう、どういうふうに?」
りくは楽しそうに聞いてきた。
「どういうふうにって・・それはだな。・・・・」
(沈黙)
「ごめん、聞こえなかった」
「まだ何も言ってない!だいたい、あんたの旦那だろ?心配じゃないのか?」
「心配?何が」
(沈黙)
「あー、わかった!二人があはーんなことになったら困るってことでしょ」
エイジとミズホは苦笑した。
二人は彼女が分かっていてからかってるのを知っている。
りく、笑い出す
「あははは!んなことあるわけないじゃない!心・配・しょー」
煌星、面白くなさそうに
「リーダー、そうやって笑ってるけど
全能寺が実はロリコンとか変態じゃないって証拠があるのか?」
煌星は本気で心配しているらしい。
りく、まだ笑ってる
「あは・・まあ確かにそんな・・あーお腹痛い。」
「問題が起こってからじゃ遅いんだぞ!!」
「あんた、自分の好きな人のことを信じられないの?」
「信じるとか信じないの問題じゃ・・てか、好きとか勝手に決めるな!
あんたは信じてるっての?」
「全能寺選優はあたしの旦那ですからね!」
りくは言い切った。
「はは、どーだか!男なんてのはだいたい同じようなもんで」
「あんたも男でしょ」
解説までに・・りくと全能寺ですが、あくまで婚約者というだけであってまだ夫婦ではなくて
「残念。俺は美少年なの」
「どっちにしろ性別が男性でしょ」
「・・・力を試してみようかな、と思って」
りくは、急に真面目な表情に戻って、つぶやいた。
「?」
「いくら修行熱心とはいえ・・わたしとダーリンを騙してまで、わざわざはるばるN野県までついていく?
何か他に目的でもあるのかしら・・」
「・・え?今騙してって言った?」
「ええ。」
「もしかしてあいつ自分で・・?」
「そうよ。」
「俺はてっきりあんたが命令したのかと。」
「”あの子の言い分では”そういうことになってるけどね。・・勝手に勘違いしちゃって、せっかちね。」
「・・待てよ、つーことは・・、なんでだ?まさか全能寺のやつに気が・・いや、
でも確か初対面で・・どういうつもりなんだ?」
煌星は混乱してぶつぶつ独り言を言い出した。
りくは、お手上げのポーズをとった。
「どういうつもりか知らないけど、見守ることにしましょうね。
さ、心配性の煌星君が飛び出さないうちに、特訓を始めなくては。
旋空、召子!」
「はーい」
外で待っていたのか、二人がドアを開けて入ってきた。
「な!おい話はまだ終わってないぞ!?」
「頼んだわよ、二人とも」
りくは爽やかに煌星の叫び(?)を無視した。
「さあ、行くぜ煌星ちゃん」
彼は旋空に担ぎあげられる。
「おい!旋ちゃん待てってば」
「蛍子みたいに余計なこと考えて足手まといになられちゃ困るからね」
旋空の後を召子が続く。
「じゃ”コレ”預かってくよ、リーダー」
「よろしく。」
「物みたく言うな!はなせ!!だいたい俺はそんな訓練了解してない!はなせ〜〜」
ドアが閉まった。
「まったく、騒がしいやつね。」
りくはため息をついた。
「全能寺選優は私の旦那なのよ!・・ですって」
後ろからエイジが言った。
「かなりの自身ですねぇ」
「な、なによ」
「これで彼が隠しカメラが仕掛けられてるの知ったら・・」
エイジが本棚をスライドさせると壁に薄型のスクリーンが用意されていた。
『わあっ雪すごいよ雪!すごーい!!こっちじゃこんなに降ることなんてないもんね!』
蛍子がはしゃいでいる様子が。
全能寺は前の席で眠っていた。
「わっ!ちょ・・ちょっと!!」
りく、あわてる。
「あくまで、ダースのリーダーとして隊員を見守るためのシステムですからねっ!」
「監視は監視よね?」
「今回は別として今後浮気騒動なんてあったらどんなことになるやら」
「さあっ!ダーリンの活躍を見せてもらうわよ」
「リーダー、そろそろ会議の準備をする時間ですよ。」
「え゛・・」
「ご両親には何て行って出てきたんだ?」
「清穂(きよほ)ちゃんちでテストの集中合宿するって・・ハッ・・テスト・・」
「え、何だって?」
「・・・(青ざめる蛍子)」
(守護星の秘密の解説)
「えー、本人の変わりに解説すると。この3日が終わったら中間テスト3日前になってしまうわけですね」
「あ゛〜〜〜・すっかりわすれてた・・・!!何も用意してきてない〜〜〜!!」
蛍子はどうしようどうしようと頭を抱えてぶつぶつつぶやき始めた。
全能寺は考え事に夢中で聞いていなかった。
「全さん、数学の問題を教科書なしで復習できるかな?」
「?」
「観念するんだな、蛍子。さ、自分の選んだことには責任をとらんとな」
「いやだぁぁああ!!うちの親はけっこう成績にうるさいんだよ!!」
「お客さん、静かにしてくれませんかね。」
と運転手。
ったく・・最近のガキは・・という独り言が聞こえたが、二人とも聞いていなかった。
「はは、まあ施設についたら雪遊びでもするか?」
煉赫が言った。
「・・・」
蛍子は自分のおかした大きな誤算にしばらく頭が真っ白になっていた。